広告予算が月30万円なら、媒体は1つに絞る。複数媒体に分散して51万円を溶かした実例

月30万円規模の広告予算を複数の媒体に分けるのは、ほぼ確実に失敗します。理由は、各媒体が学習を終えるのに必要なコンバージョン数に届かないからです。実際にあるD2C案件では、Meta以外にYahoo・LINE・SmartNewsへ広げた結果、この3媒体だけで約51万円を消化してコンバージョンは1件のみ。すべて1〜2週間で停止しました。少額予算で取るべき戦略は「1媒体に集中して学習を回し切る」こと。媒体を増やすのは、1つ目で目標CPAを達成してからです。
広告予算が月30万円ほど確保できたとき、多くの人が「Metaもやって、Googleもやって、できればYahooも」と考えます。リスクを分散したい気持ちは自然です。
ですが、この分散こそが少額予算で最も成果を潰す判断です。代理店側で運用してきた経験から言うと、予算が小さいほど「絞る」以外の正解はほとんどありません。
この記事では、実際に複数媒体へ分散して失敗した案件のデータを出しながら、なぜ分散が効かないのか、そしてどの媒体を1つ選ぶべきかの判断基準を書きます。
目次
実データ:3媒体に広げて、51万円でコンバージョン1件
あるD2Cブランドの案件で、Metaを主軸にしつつ、配信面を広げるためにYahoo・LINE・SmartNewsを追加検証したことがあります。結果はこうでした。
| 媒体 | 消化額 | コンバージョン | 結末 |
|---|---|---|---|
| Yahoo・LINE | 約179,000円 | 0件 | LINEは初動2日で停止、Yahooも約2週間で停止 |
| SmartNews | 約329,000円 | 1件(CPAは目標の約16倍) | 約2週間で停止 |
| 合計 | 約51万円 | 1件 | 全面停止し、Metaへ集約 |
注目してほしいのは、これが「配信がうまくいかなかった」ケースではないことです。SmartNewsのCTRは0.42%とディスプレイ広告として標準的で、クリックを集める部分は機能していました。美容・ファッションなど関連性の高い面にも配信できていて、ターゲットのズレも大きくなかった。
それでも申込に至らなかった。LINEに至っては、Yahoo比で本LP到達あたりの単価が10倍近くになり、初動2日で止める判断をしています。
この案件は月数百万円規模の予算があったからこそ、51万円を「検証」として使えた。
月30万円の予算で同じことをすれば、1ヶ月半分の予算が丸ごと消える計算になる。
なぜ少額予算で分散が効かないのか
理由は感覚的なものではなく、広告配信の仕組みに由来します。
1. 各媒体が「学習」を終えられない
Meta広告もGoogle広告も、配信の最適化には一定数のコンバージョンデータが必要です。Metaの場合、広告セットあたり週50件が目安とされています。この数に届かないと、機械学習が最適な配信先を見つけられないまま、手探りの配信が続きます。
月30万円を3媒体に分ければ、1媒体あたり10万円。CPAが1万円の商材なら月10件、週2〜3件です。これでは学習が回りません。3つの媒体すべてが「学習が終わらないまま」燃えていくことになります。
2. 媒体ごとに初期の無駄打ちが発生する
どの媒体も、配信開始直後は反応の良い層を探すための試行錯誤にお金を使います。この初期コストは媒体の数だけ発生します。1媒体なら1回で済むものが、3媒体なら3回分かかる。少額予算では、この初期コストだけで予算を使い切ります。
3. 運用の手数も3分の1になる
見落とされがちですが、運用する人間の時間も分散します。3媒体を見れば、1媒体あたりに割ける改善の手数は3分の1です。クリエイティブの差し替えも、ターゲットの調整も、どれも中途半端になります。
では、どの1媒体を選ぶか
絞ると決めたあと、次は「どれを選ぶか」です。判断は好みではなく、商材の性質で決まります。
| 商材・状況 | 選ぶべき媒体 | 理由 |
|---|---|---|
| すでに検索されている (悩みや商品名で調べられる) | Google検索広告 | 顕在層を刈り取れる。少額でもキーワードを絞れば戦える |
| まだ知られていない (検索されない新しい商材) | Meta広告 | 需要を作る側の配信。ターゲティングで見込み客に届けられる |
| ビジュアルで魅力が伝わる (D2C・美容・食品など) | Meta広告 | 画像・動画で訴求でき、フィード面の獲得効率が高い |
| 法人向け・意思決定が長い | Google検索広告 | 能動的に情報収集している層に当たる |
迷ったときの原則はシンプルです。「その商材は検索されるか」を考えてください。検索されるならGoogle、されないならMeta。この一問でほとんどの場合は決まります。
2媒体目に広げるタイミング
絞ったあと、いつ増やすか。基準は明確です。
1媒体目で目標CPAを達成し、その状態が安定してから。
「うまくいっていないから他も試す」は、失敗を横に広げるだけ。
成果が出ていない媒体を抱えたまま次を足すと、どちらも中途半端なまま予算が尽きます。逆に1媒体で勝ち筋が見つかっていれば、そこで得た訴求やターゲットの知見を2媒体目に移植できるため、立ち上がりが早くなります。
なお、予算を増やすときも一気に倍にはしないでください。予算を2倍にして配信品質が落ちた例のとおり、スケールは段階的に進めるのが鉄則です。
読者が自分で確かめるチェックリスト
- 今の予算を、いくつの媒体に分けているか把握している
- 1媒体あたりの月間コンバージョン数が、学習に足りる水準か確認した
- 「その商材は検索されるか」で媒体を選んでいる(なんとなくではない)
- 成果の出ていない媒体を、惰性で続けていない
- 2媒体目を足す条件(1媒体目で目標CPA達成)を決めている
2つ目に即答できないなら、そこがボトルネックです。媒体を増やす前に、まず1媒体あたりのCV数を数えてください。
少額予算の戦い方は、集中しかない
月30万円は、決して少ない金額ではありません。ただし3つに割った瞬間に、どれも戦えない額になります。予算が小さいほど、選択と集中が唯一の勝ち筋です。
ちなみに、月30万円前後は多くの代理店が最低出稿金額として設定している水準でもあります。この帯で代理店に依頼する際の考え方は最低出稿金額の記事にまとめました。
まずは1媒体。そこで勝ち筋を見つけてから、次に広げる。遠回りに見えて、これが最短です。
よくある質問
月30万円の広告予算なら、いくつの媒体に出すべきですか?
1媒体に集中すべきです。3媒体に分けると1媒体あたり10万円となり、配信の最適化に必要なコンバージョン数に届きません。実例では3媒体へ広げた結果、約51万円を使ってコンバージョンは1件のみでした。
MetaとGoogle、どちらを選べばいいですか?
「その商材が検索されるか」で決まります。悩みや商品名ですでに検索されているならGoogle検索広告、まだ知られていない新しい商材ならMeta広告です。ビジュアルで魅力が伝わるD2C商材もMetaが向きます。
2媒体目に広げるタイミングは?
1媒体目で目標CPAを達成し、その状態が安定してからです。成果が出ていない状態で他の媒体を足すのは、失敗を横に広げるだけになります。勝ち筋が見つかっていれば、その知見を2媒体目に移植できるので立ち上がりも早くなります。