広告代理店を乗り換える前に確認すること。失敗しない切り替えの手順。

代理店への不満が限界に達したとき、多くの担当者が考えるのは乗り換えです。毎月レポートが届くだけで改善提案が来ない。担当者がまた変わった。CPAが半年以上同じ水準から動いていない。こういう状態が続くと、変えたくなるのは当然です。

ただ、代理店の乗り換えはやり方を間違えると、移行期間中に成果が大きく落ちたり、それまで積み上げたアカウントの資産が失われたりします。勢いで動くのではなく、順番を守って進める必要があります。

代理店側で複数のクライアントを担当し、その後独立して発注者側のサポートをするようになった経験から、乗り換えの手順と注意点を整理します。

乗り換えを躊躇する理由のほとんどは解消できる

代理店を変えたいと思いながら踏み切れない理由として、よく聞くのが次の3つです。

アカウントを引き継いでもらえるか分からない。今まで積み上げたデータがどうなるか不安。新しい代理店に慣れるまでに時間がかかる。

これらは確かに実際のリスクですが、事前の準備と手順を踏めばほとんどは回避できます。むしろ問題なのは、不満を抱えたまま現状の代理店に払い続けることのコストを軽く見てしまうことです。

月の広告費が100万円で成果が出ていない状態が6ヶ月続けば、600万円の機会損失です。乗り換えの移行コストより、現状維持のコストの方が大きいケースは非常に多いです。

乗り換えを判断する3つのサイン

不満があるからといって、すべてのケースで乗り換えが正解とは限りません。代理店の問題なのか、商材や市場の問題なのかを切り分けることが先です。

代理店を変えるべきサインとして、明確に判断できるものを3つ挙げます。

① 「先月何を変えたか」を代理店が具体的に説明できない

運用の実態を確認するシンプルな質問です。入札を変えた、クリエイティブを入れ替えた、オーディエンスを調整した——こういった具体的な答えが返ってこない場合、実質的な運用が行われていない可能性が高い。

② 担当者が1年以内に2回以上変わっている

担当者が変わるたびに、アカウントの背景理解がリセットされます。引き継ぎが十分でなければ、新担当者が把握するまでの数ヶ月は実質的に停滞します。頻繁な担当変更は代理店側の構造的な問題を示しており、個人の問題ではないことが多いです。

③ 6ヶ月以上、CPAもROASも有意な改善がない

広告運用は短期間で劇的に変わるものではありませんが、6ヶ月間まったく動きがないのは別の話です。施策を打っていれば何かしら数字に変化が出るはずで、それがない場合は手が動いていないか、打ち手を持っていないかのどちらかです。

逆に、担当者は動いているがプロダクトの訴求自体に問題がある場合や、市場全体の競合コストが上がっている場合は、代理店を変えても状況は改善しません。数字が悪い原因がどこにあるかを冷静に判断することが先決です。

乗り換え前に必ずやること:アカウント権限の確認

乗り換えを決意したら、最初に確認すべきことがあります。それは、広告アカウントの管理権限が自社にあるかどうかです。

Meta広告やGoogle広告のアカウントは、代理店名義で作られている場合と、クライアント名義で作られている場合があります。代理店名義のアカウントの場合、乗り換え時に「アカウントを引き渡せない」と言われるケースがあります。これは業界的に問題のある慣行ですが、現実として起きています。

確認方法は媒体によって異なりますが、Meta広告であればビジネスマネージャーの管理者権限が自社のアカウントにあるかどうかを確認します。Google広告であればMCCの管理構造を確認します。現在の代理店に「アカウントのオーナーシップはどちらにありますか」と直接聞くのが最も確実です。

もし代理店名義だった場合は、乗り換えと同時に新アカウントを立ち上げる必要が生じます。この場合、学習データが引き継がれないため、立ち上げ期間を見込んで計画を立てる必要があります。

データを保全してから動く

現在のアカウントに蓄積されたデータは、次の代理店にとっても重要な情報です。少なくとも以下は、乗り換え前に手元に確保しておくことを強く推奨します。

・過去1〜2年分のキャンペーン別・月別パフォーマンスデータ(CSVで出力)

・コンバージョンタグの設置情報と、計測されているイベントの一覧

・使用中のカスタムオーディエンスとルックアライクの設定内容

・過去に配信したクリエイティブと、その成果データ

・LPのURLとヒートマップデータがあれば合わせて

これらを新しい代理店に渡せると、ゼロから始めるのではなく、過去の成功パターンを引き継いだ状態でスタートできます。データの引き継ぎが不十分なまま切り替えると、新代理店が試行錯誤に費やす時間が長くなり、その間の費用はすべて発注者が負担することになります。

乗り換え先の選び方

新しい代理店を探すとき、多くの発注者が見てしまうのが実績の数字や受賞歴です。これ自体は参考にはなりますが、判断基準の中心に置くべきではありません。

自社の業種・規模・媒体での実績があるかどうかを確認することの方が重要です。BtoB向けのリード獲得と、ECのトランザクション獲得では、運用の勝ちパターンがまったく異なります。実績が自社の状況と近いかどうかを聞いてください。

また、担当者の経験年数と担当社数は必ず確認します。提案を持ってくる営業担当と、実際に運用する担当者は異なることが多いです。営業ではなく、実際に手を動かす担当者と話す機会を作るよう依頼してください。

提案を受ける際には、現在のアカウントの課題をどう見るかを聞くのが有効です。数字を見て「ここが問題で、この順番で改善します」と具体的に言える代理店と、「弊社の実績では〜」と自社の話しかしない代理店では、実際に運用が始まったあとの動き方に大きな差が出ます。

移行期間のリスクを最小化する手順

乗り換えが決まったら、旧代理店への連絡と新代理店への移行を計画的に進めます。感情的になって即日契約終了するのは、移行期間の空白を生むリスクがあります。

現実的な手順としては、次のような流れが安全です。

1. 新代理店の選定と契約完了(旧代理店への通知より先)

2. アカウント権限の移管手続き(管理者追加)

3. 現状データの引き継ぎ資料を新代理店に共有

4. 旧代理店への解約通知(契約書に定められた通知期限を確認)

5. 新代理店による運用引き継ぎ期間(2〜4週間程度)

6. 旧代理店の配信停止・新代理店への完全移行

解約通知のタイミングは、契約書に記載された解約予告期間を必ず確認してください。多くの場合、1ヶ月前通知が設定されています。これを無視すると違約金が発生するケースがあります。

移行期間中は、可能であれば旧代理店と新代理店が並走する期間を設けることを検討してください。広告費を分けて両方に運用させ、新代理店の初動を確認してから完全に切り替える方法です。全予算をいきなり新代理店に預けると、立ち上がりに時間がかかった場合のダメージが大きくなります。

乗り換えても改善しないケースがある理由

代理店を変えたのに成果が改善しなかったという話を、発注者側から聞くことがあります。

原因として多いのは、乗り換え先の選定が表面的だったこと、データ引き継ぎが不十分で新代理店が過去の失敗を繰り返したこと、そして問題が代理店ではなくLPやオファー設計にあったのに見逃していたことです。

代理店がどれだけ優れていても、LPのCVRが著しく低ければCPAは下がりません。広告からLPへの訴求の一貫性が取れていなければ、クリックが無駄になります。乗り換えを検討するタイミングで、広告以外の部分もあわせて確認しておくことが、乗り換え後に成果を出すための前提条件です。

代理店に言いにくいことを言える関係を作れているか

最後に、少し別の角度から話します。

代理店との関係が機能しなくなる大きな原因の一つは、発注者側が「代理店に任せていれば何とかなる」という受け身の姿勢を続けることです。代理店は情報を持っていますが、発注者側のビジネスの文脈や事業上の優先順位は、発注者から伝えなければ分かりません。

月次のMTGで数字の説明を聞くだけになっているなら、そこを変える余地があります。今期の重点商材は何か、CPAより件数を優先したい時期かどうか、競合が何をしているか——こういった情報を代理店に積極的に渡している発注者は、同じ代理店でも明らかに成果が違います。

乗り換えを検討する前に、今の代理店に言いにくいことを言えているかを振り返ってみることも、一つの判断材料になります。もし関係性の問題であれば、乗り換えより先に解決できる可能性があります。構造的に動いていないなら、乗り換えが正解です。

どちらかを判断するための材料を持つことが、発注者として代理店と正しく向き合う出発点だと思っています。

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