代理店のレポートの見方。数字の羅列から本当のことを読み取るために。
毎月、代理店からレポートが届く。インプレッション、クリック、CPA、ROAS……数字が並んでいる。「先月より改善しています」という一言が添えてある。でも正直なところ、それが本当に良い状態なのか悪い状態なのか、判断しきれていない。
こういう感覚を持っている発注者の方は、思っているよりずっと多いと思います。わたし自身が代理店側にいたころ、レポートを受け取った発注者の多くが「なんとなく分かった」という表情でMTGを終えていました。深掘りされることはあまりなかった。
今回は、代理店のレポートをどう読めばいいかを整理します。難しいことは一切ありません。押さえるべき構造を知っておくだけで、毎月の数字が急に意味を持ち始めます。
レポートには「見せたい数字」と「見せたくない数字」がある
まず前提として知っておいてほしいのは、代理店が作るレポートは中立ではないという点です。悪意があるという意味ではなく、担当者も人間なので、自分たちの成果が伝わりやすいよう、数字の見せ方を選んでいます。
たとえばCPAが悪化しているとき、その月の「クリック率が前月比120%に改善した」という数字を前面に出すことがあります。クリック率の改善は本物の成果かもしれませんが、最終的な獲得コストが悪化しているなら、発注者にとって重要な指標はCPAの方です。
あるいはコンバージョン数が減少しているときに「CV単価が改善しました」と報告されることもある。CV数が減ってCPA(CV単価)が下がったのは、単純に言えばお金を使わなかっただけです。予算消化率と合わせて見ないと意味を誤解します。
「改善した」という表現が出てきたとき、何が改善して何が変わっていないのかを必ず確認してください。これだけでレポートの読み方はかなり変わります。
必ず確認すべき3つの数字とその関係
指標は多数ありますが、最終的に発注者が見るべき数字は3つの関係に集約されます。
① 消化金額:今月いくら使ったか
② CV数(コンバージョン数):問い合わせや購入が何件取れたか
③ CPA(CV単価):1件取るのにいくらかかったか
この3つは「消化金額 ÷ CV数 = CPA」という関係にあります。つまり3つのうち2つが分かれば残り1つは自動的に決まります。レポートでこの3つが整合しているか確認するだけで、数字を「なんとなく」ではなく「構造として」読めるようになります。
たとえば消化金額が前月と同じ100万円で、CV数が20件から15件に減ったとします。このときCPAは5万円から6.6万円に悪化しています。もし担当者が「クリック数が増えました」と報告してきたとしたら、「でもCVは減っていますね、原因はなんですか」と返せるようになります。
ECなら売上とROASも加えて確認する必要がありますが、基本的な構造はこの3指標の把握から始まります。
「前月比」に惑わされないために
代理店のレポートで最もよく使われる比較軸が「前月比」です。「先月より10%改善」という表現は一見分かりやすいですが、比較すべき期間はケースによって変わります。
広告の成果は季節性の影響を受けます。3月のCPAと4月のCPAを比べても、商品の特性によっては需要期と閑散期の比較になっていることがある。人材系なら3〜4月は採用需要が高く、CPAが下がりやすい時期です。この時期に「前月比改善」と言われても、市場全体が動いているだけかもしれません。
正確に運用の善し悪しを判断するには「前年同月比」が有効です。季節性を除いた比較ができます。ただし媒体の仕様変更やアカウントの変遷があるため、単純比較には注意が必要です。
加えて、目標値との比較も欠かせません。当初設定したCPA目標が5,000円だったとして、今月の実績が4,800円なら達成。6,500円なら未達。前月比が改善していても目標未達なら、会話の焦点はそこにあるべきです。
代理店レポートに書かれていないことを読む
レポートに書いてある数字を読むのと同じくらい重要なのが、書かれていないことを確認することです。
代理店側にいたころ、担当者がレポートに含めない情報がいくつかありました。配信シェアの低下、フリークエンシーの上昇、クリエイティブごとのCPA差異。これらは運用の問題を示すことが多い数字です。表に出すと説明が必要になるため、自然と省かれがちです。
確認したいのは以下の4点です。
・クリエイティブ別のCPA:素材ごとの成果差が出ていないか
・フリークエンシー:同じ人に何度も当たっていないか(3回以上になると効率が落ちやすい)
・配信量:予算を使い切れているか、あるいは使いすぎていないか
・前月からの設定変更内容:何をどう変えたか、その結果どうなったか
この4点をレポートに含めてもらうよう、担当者に依頼するだけで情報量が大きく変わります。「いただいているレポートにこの項目も追加していただけますか」と一言伝えれば、断られることはほぼありません。
「改善提案」が毎月同じなら要注意
月次MTGで担当者が持ってくる提案の中身を、過去3ヶ月分振り返ってみてください。
「クリエイティブを追加します」「ターゲットを広げます」「入札を調整します」という内容が繰り返されているとしたら、実質的に同じことを言い続けているだけの可能性があります。クリエイティブを追加することもターゲット調整も、それ自体は正しい施策です。ただし、前回の変更の結果を踏まえた根拠が伴っていなければ、試行錯誤ではなく作業の消化です。
担当者に投げかけてほしい質問があります。「先月の変更で、数字にどんな変化がありましたか」という一言です。変更の効果を把握した上で次の施策を考えているのか、それとも何となく動かしているだけなのか、この質問への回答の具体性でわかります。
「全体的に最適化しています」という抽象的な答えしか返ってこないようであれば、担当者の中に仮説と検証のサイクルがない可能性があります。これはレポートの問題ではなく運用の質の問題です。
レポートから担当者の稼働量を読む
代理店の担当者が1ヶ月にどれくらいの工数をかけているか、レポートからある程度推測できます。
設定変更の回数と内容が記録されているレポートなら、その頻度と質を見てください。月に1〜2回しか設定変更がなく、その内容も入札の微調整程度なら、実質的な稼働は月に数時間程度かもしれません。広告費100万円に対して手数料20万円を払っている場合、それが妥当な対価かどうかは発注者として判断が必要です。
代理店側の現実として、1人の担当者が複数のクライアントを掛け持ちしているケースがほとんどです。担当者の稼働量はクライアントへの優先度によって変わります。声を上げているクライアントには時間をかけ、何も言わないクライアントは後回しになる。残念ながらこれが実態に近いです。
レポートを受け取ったら「先月の主な対応内容を教えてください」と確認する習慣をつけるだけで、担当者への緊張感が生まれます。発注者が数字を見ていることが伝わると、対応の質は変わります。
レポートに感情を持ち込まない
最後に一点。レポートを見るとき、担当者との関係性や印象に引っ張られないことが大切です。
感じの良い担当者が担当しているからといって、数字が良いわけではありません。逆に、コミュニケーションが少し不足していても、しっかり数字を動かしている担当者もいます。レポートで判断すべきは「成果が出ているか」と「適切なプロセスで動いているか」の2点です。
代理店との付き合いを続けるかどうか、変えるかどうかを判断するときも、同じです。長い付き合いだから、いつも親切にしてもらっているから、という理由で関係を維持するのは、発注者としての判断を曇らせます。毎月支払っている費用に対して、見合った価値が提供されているかどうかを数字で確認する。それだけです。
代理店レポートを正しく読める発注者は、代理店にとっても良い緊張感を与えます。質問される、確認される、という経験は、担当者の仕事の質を上げます。読める発注者になることは、代理店との関係をより健全にする最初の一歩です。
代理店レポートの読み方、一緒に整理しませんか
毎月のレポートが本当に正しく読めているか不安な方、担当者への質問の仕方を知りたい方へ。
現状の数字を代理店出身者の目線で一緒に確認します。