広告代理店への不満、8割の担当者が抱えながら動けない理由と最初の一手。
中小企業の経営者・マーケ担当者を対象にした調査で、現在依頼中の広告代理店に不満を持っているという回答が約8割に達したというデータがあります。それにもかかわらず、乗り換えを実行しない理由として最も多かったのが「探すのが面倒で時間が取れない」でした。
不満はある。でも動けない。
この状態が続く間も、毎月の手数料と広告費は出続けます。代理店側にいた経験から言うと、担当者が変わらず発注者からの圧力もない案件は、正直なところ優先順位が下がりやすくなります。つまり「動けない発注者」のコストは、時間が経つほど大きくなります。
今回は、代理店への不満の正体を整理した上で、最初に取るべき一手を具体的に書きます。
不満の中身を分解すると、対処法が見えてくる
代理店への不満は、大きく3種類に分かれます。構造的な問題、担当者レベルの問題、そして発注者側の問題です。この3つを混同すると、代理店を変えても同じことが繰り返されます。
調査データによると、主な不満の内訳は「費用が高い」が54%、「広告効果が悪い」が52%、「新しい提案がない」が36%、「レスポンスが遅い」が34%、「レポートの内容が薄い」が34%という順になっています。
これを先ほどの3分類に当てはめると次のようになります。
【構造的な問題】費用が高い・提案がない・レポートが薄い
代理店のビジネスモデルや組織体制に起因するもので、担当者を変えても解決しないことが多い。代理店自体を変えるか、契約内容を見直す必要がある。
【担当者レベルの問題】レスポンスが遅い・コミュニケーションが噛み合わない
担当者を変えてもらうことで改善する可能性がある。まず代理店内での担当変更を依頼するのが最初の選択肢。
【発注者側の問題】「広告効果が悪い」の一部
LPの品質、オファー設計、計測環境の問題が混在している場合、代理店を変えても解決しない。原因の切り分けが先になる。
「広告効果が悪い」という不満は最も多い種類に見えますが、実態として代理店の問題である場合と、広告以外の問題である場合が混在しています。ここを分けずに代理店を変えると、移行コストだけかかって状況が変わらないという結果になりやすいです。
動けない理由の正体
「探すのが面倒」という理由が乗り換えを止めている最大要因になっているのは、裏を返すと代理店を探す方法が分からないということでもあります。
代理店の比較サイトや紹介サービスを使う方法はありますが、これらは基本的に代理店側が掲載料を払って掲載されているモデルです。掲載されている代理店が発注者の課題に合っているかどうかは別の話で、紹介サービス経由で選んだ代理店がまた合わなかったというケースも珍しくありません。
実際に代理店側にいたとき、競合比較で選ばれた案件よりも、知人紹介や口コミで来た案件の方が長期的な関係になりやすいと感じていました。発注者が代理店の実態を判断する材料が少ないため、信頼できる人からの紹介が最も確度が高くなるのは合理的です。
ただ、紹介がない場合でも判断できる材料はあります。大事なのは、見た目の実績や受賞歴より、自社の業種・規模・媒体での具体的な経験があるかどうかです。
5つの不満別、最初に取るべきアクション
不満の種類ごとに、最初の一手は変わります。いきなり乗り換えに動く前に、段階的なアプローチを取る方が現実的です。
費用への不満は、まず契約内容の見直しから入ります。広告費に連動した手数料率を固定費に変えられないか交渉する余地があります。月の広告費が少ない案件では、固定額の方が代理店も動きやすくなる構造にできます。
提案がないという不満は、発注者側から情報提供を増やすことで変わるケースがあります。今期の事業目標、競合状況、社内で優先している商材——こういった情報を代理店と共有している発注者は、同じ代理店でも明らかに違う扱いを受けます。提案がないのは「情報がないから提案できない」という場合もあります。
レポートが薄いという不満には、フォーマットを発注者側から指定するという方法があります。毎月送られてくるレポートのフォーマットを変えてほしいと依頼することは発注者の権利です。見たい数字を明示的に伝えることで、レポートの質が上がることは多いです。
レスポンスが遅いという不満は、担当者変更を依頼するのが最初の選択肢です。代理店との契約はそのままに、担当者だけ変えてもらうことは多くの場合可能です。変更を依頼しても動きがなければ、その時点で乗り換えを検討する判断材料になります。
広告効果への不満は、まず原因の切り分けから始めます。代理店に「現状の課題はどこにあると診断しているか」を言語化してもらうことで、代理店側の実力と、問題の所在を同時に確認できます。
今すぐできる確認:代理店の実態を測る3つの質問
代理店への不満を抱えている方に、まず試してほしいことがあります。次の3つの質問を代理店に投げてみてください。
① 先月の運用で変えた設定と、その理由を教えてください
② 現状のアカウントで最も改善余地があると思っている箇所はどこですか
③ 担当者は現在、何社の案件を担当していますか
①に対して「全体的に最適化しました」という抽象的な回答しか返ってこない場合、実質的な運用が行われていない可能性があります。具体的な変更内容と根拠が出てくるかどうかが確認ポイントです。
②に対して「特に問題はありません」という回答が返ってくる代理店は、改善の視点を持っていないか、課題を発注者に伝える習慣がないかのどちらかです。運用には常に改善余地があるもので、それが言語化できない代理店は停滞しています。
③の回答で担当社数が10社を超えている場合、週40時間の稼働を前提にすると1社あたり4時間以下の計算になります。これが適正かどうかは案件規模にもよりますが、担当者が抱えている件数を把握しておくことは、工数の実態を理解する上で重要です。
この3つの質問への回答の質を見るだけで、今の代理店との関係をどうするかの判断材料の多くが揃います。
「探す時間がない」を解消する現実的な方法
乗り換えを検討し始めたとき、最もネックになるのが時間です。通常業務をこなしながら代理店を探し、比較し、選定し、契約して移行する——これをゼロから進めると相当な工数がかかります。
現実的な選択肢として、第三者に代理店選定を依頼するという方法があります。マーケコンサルタントや、広告運用の外部顧問に代理店選定のサポートを依頼すると、候補の絞り込みと見極めにかかる時間が大幅に短縮できます。費用はかかりますが、合わない代理店との契約が続くコストと比較すれば、むしろ安くなるケースがほとんどです。
わたし自身も、現在の代理店への不満から相談に来られたクライアントの代理店選定をサポートすることがあります。代理店の内側を知っているからこそ、提案段階では見えにくい「本当に動く代理店かどうか」を見極める視点を提供できます。
不満を放置するコストを計算してみる
最後に、現状維持のコストを具体的に考えてみてください。
月の広告費が150万円、手数料20%の契約であれば、月30万円が代理店に支払われています。これが半年続けば180万円です。この180万円に見合う価値が提供されていないと感じているなら、不満を抱えながら現状を続けることの機会損失は相当な規模になります。
動けない理由が「探す時間がない」なら、探す工数をアウトソースする方法があります。「何から手をつければいいか分からない」なら、まず前述の3つの質問から始められます。
不満を持ちながら動けない状態が最も損です。小さな一歩から動くことが、状況を変える最初のきっかけになります。