CPAが改善しない本当の理由。施策より先に確認すべき構造的な問題。
CPAを下げたい。当然の要望です。広告を出す目的がCV獲得である以上、1件あたりの獲得コストを下げることはずっと課題であり続けます。
ただ、CPAが改善しない案件には共通した構造的な問題があることが多く、入札調整やクリエイティブ変更といった「運用の最適化」だけを積み重ねても、根本の問題が解消されないまま頭打ちになります。
10年近く広告運用に関わってきた中で、CPA改善の依頼を受けた案件の多くは、運用以前の部分に問題がありました。今回はそこを整理します。
CPAは「広告費 ÷ CV数」に過ぎない
CPAを下げるためには、広告費を減らすかCV数を増やすしかありません。これは式の話ですが、ここを整理した上でどちらを動かすべきかを考えることが重要です。
広告費を維持したままCV数を増やすには、CTR(クリック率)を上げるか、CVR(LPのコンバージョン率)を上げるか、ターゲットの精度を上げるかのいずれかです。広告費を下げてCPAを維持するには、質の低い配信を削る必要があります。
ところが実際には「CPAを下げてください」という依頼に対して、担当者がとりあえず入札を下げたり、クリエイティブを変えたりする作業を繰り返すことが多い。これはCPAを構成する変数のどれに対して働きかけているのかが不明確なまま動いている状態です。
CPAの改善に取り組む前に、まず「CPAが高い原因はどこにあるか」を特定することが先です。診断なしに施策を打ち続けると、効いている施策と効いていない施策の区別がつかなくなります。
CPAが高い原因を特定する3ステップ
CPAが高い原因を特定するための確認の順序があります。
最初に確認するのはCTRです。広告のクリック率が低いということは、広告を見た人が興味を持っていないということです。ターゲットがズレているか、クリエイティブが刺さっていないかのどちらかです。業種・媒体によって目安は異なりますが、Meta広告のフィード広告であれば1%未満のCTRは改善の余地があります。
次にLPのCVRです。クリックはされているのにCVが出ない場合、問題はLP側にあります。訪問者がLPのどの位置で離脱しているかを計測していない場合、まずヒートマップツールか、最低でもGA4でのページ滞在時間と直帰率を確認してください。CVRが1%を下回っている場合、LP上に大きな離脱要因があると考えてよいです。
三つ目が流入の質です。CTRもCVRも数値として問題ないのにCPAが高い場合、そもそも広告が届いている層がCVしやすいターゲットではない可能性があります。広告のターゲット設定を確認します。
① CTRが低い → クリエイティブまたはターゲットの問題
② CVRが低い → LPまたはオファーの問題
③ CTR・CVRは普通だがCPAが高い → ターゲットの質またはCPC(クリック単価)の問題
この3ステップを踏まずに「CPAを下げてください」と言い続けると、担当者もどこを改善すれば良いか分からないまま動くことになります。
LPのCVRを上げる前に確認すること
CVRが低いと分かった場合、即LP改修に走る前に確認すべきことがあります。
広告とLPの内容が一致しているかどうかです。広告で「初回無料」と伝えておきながら、LPのファーストビューに価格だけが書いてある。広告で「即日対応可能」と訴求しているのに、LPには対応速度の記載がない。このようなズレは、広告クリック直後の離脱に直結します。
あるBtoB向けSaaSの案件では、CVRが0.4%という状態が続いていました。LP改修のための予算を検討していましたが、まず広告とLPのメッセージを精査したところ、広告では「無料トライアル開始」という訴求をしているのに、LPのCTAボタンが「資料ダウンロード」になっていることが分かりました。訴求するアクションが違うというシンプルな問題でした。CTAを「無料トライアルを試す」に統一しただけで、CVRは0.4%から1.1%まで改善しました。LP改修に費用はかかっていません。
LPの問題ではなく接続の問題であることは珍しくありません。LP改修の前に、広告からLPまでのメッセージの一貫性を確認してください。
目標CPAの設定が現実的かどうかを確認する
改善活動をしているのにCPAが目標に届かない、という状況が続く場合、目標値自体が現実的かどうかを疑う必要があります。
CPA目標は事業の採算ラインから逆算して設定するのが正しい順序です。客単価3万円、粗利率40%の商品であれば粗利は1.2万円です。リピート購入が期待できるなら許容CPAはこれより高く設定できますが、単発取引であれば許容CPAは1万円以下が目安になります。
ところが実際には「競合がCPA5,000円で運用しているらしい」という情報をもとに目標が設定されていたり、根拠なく「CPA1万円以内」という数字が決まっていたりするケースがあります。市場の競争環境によっては、構造上達成できないCPA目標が設定されていることもあります。
CPAが改善しないとき、目標値が現実の市場環境に合っているかどうかを確認することも、立派な改善施策の一つです。
クリエイティブに頼りすぎる前に
CPA改善の手段として最も多く提案されるのがクリエイティブの変更です。新しい素材を作れば改善するのではないか、という期待は理解できます。実際にクリエイティブが原因のことも多い。
ただし、クリエイティブが問題でないのにクリエイティブを変え続けることには、費用と時間のロスが発生します。新しい素材を作るたびにアカウントの学習がリセットされるリスクもあります。
クリエイティブを変える前に、既存の素材ごとにCVRとCPAを確認してください。1本の素材が極端にCPAが高い場合はその素材を止めるだけで改善することがあります。全体のCPAが高い場合は、クリエイティブ以外に問題がある可能性が高い。
CPAが改善しないとき、最初にやるべきなのは施策を増やすことではなく、現状の数字を構造的に読むことです。何が原因でCPAが高いのかを特定してから施策を絞る。この順序が逆になると、改善しているのかどうかすら分からなくなります。