Microsoftはなぜ広告費をほぼかけずに、Xboxファンを熱狂させ続けられるのか

この記事の結論

Microsoftが広告費をほぼかけずにXboxファンを維持できるのは、話されるサービスと戻ってくる動線を設計しているからです。Game Passはユーザーが自発的に語る体験を提供し、Microsoft Rewardsは使うほど好きになる循環を作っています。広告費に頼らない集客とは、サービス設計そのものを問い直すことです。

Xboxはプレステと比べてもマイナーなゲーム機。平成中期は割と持っている家庭もあると思いますが、今はあんまりXboxやってるよ、と聞かなくなりましたよね。ただ、2023年時点ではMAU数1億2,000万人と、ほぼ日本人口全体を占める人数程度はファンがいるのです。

Xboxというブランドをマーケティングの視点で眺めると、広告運用者として見逃せないことがいくつも見えてきます。PlayStation優勢と言われ続けてきた市場で、MicrosoftはXboxというブランドを通じて、派手な広告キャンペーンに頼らずにコアなファン層を維持し続けています。

なぜそれができるのか。その構造を紐解くと、一人マーケターやフリーランスの広告運用者が今すぐ取り入れられるヒントが詰まっていました。

Xboxが証明した、広告費に頼らない熱狂の作り方

Microsoftが2017年に開始したGame Passというサービスはサブスクリプションモデルです。2024年時点での契約者数は約3,400万人に達しており、競合のPlayStation Nowを大きく上回る規模に成長しました。

ただ、数字よりも注目すべきは、このサービスがどう広まったかという点です。

Game Passの認知拡大を牽引したのは、テレビCMでも大量出稿のデジタル広告でもありませんでした。既存ユーザーが自発的にSNSで語り、ゲーム系のYouTuberやストリーマーが自分の体験として発信し、それを見た人が契約するという流れが中心でした。広告業界的に言えば、アーンドメディアとオウンドメディアがペイドメディアを補完するどころか、主役になっていた構造です。

なぜそれが起きたのか。答えはシンプルで、サービス自体がユーザーにとって話したくなる体験を提供していたからです。月額数百円で大作タイトルが遊べるという体験は、ユーザーが自分の得をした感覚をそのまま他者に伝えたくなる設計になっていました。

マーケターとしてここから学べることは、広告費を積む前に、まず話されるサービスになっているかを問い直すことの重要性です。

ブランドロイヤリティを生む設計。ユーザーが自ら動く仕組みとは

Xboxにはもう一つ、見逃されがちな仕組みがあります。Microsoft Rewardsというポイントプログラムです。

Bing検索やMicrosoftのサービスを使うとポイントが貯まり、そのポイントでGame Passの延長や追加コンテンツの購入ができます。地味に見えますが、これがエコシステムとして機能しています。

ユーザーはポイントを貯めるためにMicrosoft系サービスを使い、そのことがMicrosoftのデータ収集と広告収益に貢献し、その収益がGame Passのコンテンツ拡充に回る。ユーザーの行動がブランドへの貢献につながり、その貢献がユーザーへの還元になるという循環です。

これは、ブランドロイヤリティを設計で作り出している好例です。好きだから使い続けるのではなく、使い続けるほど好きになる構造を意図的に組んでいる。

広告運用の文脈に置き換えると、リターゲティング広告で追い続けることよりも、一度接触したユーザーが自然と戻ってくる動線を設計することの方が、長期的なLTVに直結するという話です。

実際に、リターゲティング広告に月30万円以上かけながら新規獲得単価が下がらないというクライアントの相談を受けたとき、ほぼ例外なく既存ユーザーへのフォロー設計が手薄になっています。新規に広告費を使い続けるより、既存ユーザーが戻ってくる理由を作る方が費用対効果は高い。Xboxの設計はそのことを数千万ユーザー規模で実証しています。

一人マーケターがXboxから学べる、広告に頼らない集客設計の考え方

Microsoftのような巨大企業の話を持ち出すと、うちには関係ないと感じる方もいるかもしれません。ただ、構造の本質は規模に関係しません。Xboxがやっていることを小規模ビジネスに翻訳すると、次の3点に集約されます。

① 体験そのものを話されるように設計する

② 一度接触したユーザーが自然と戻る動線を作る

③ ファンの声を資産として扱う

まず、体験そのものを話されるように設計すること。広告のクリエイティブを磨く前に、サービスを使った人が誰かに話したくなる瞬間がどこにあるかを設計することです。飲食店であれば提供スピードや盛り付けの驚きがそれにあたりますし、BtoBのサービスであれば初回の納品物のクオリティや、問い合わせ後のレスポンスの速さがそれになりえます。

次に、一度接触したユーザーが自然と戻る動線を作ること。Game Passのポイントプログラムのように、再訪を促す設計をメルマガ、LINE、SNSのどこかに持っておくことが重要です。広告で取り込んだユーザーをそのまま放置すると、LTVは広告費に食われ続けます。

最後に、ファンの声を資産として扱うこと。Xboxコミュニティの熱量は、Microsoftが作ったのではなくユーザーが自発的に作り上げたものです。ユーザーの声を積極的に拾い、発信に活かし、コミュニティを育てる視点を持つだけで、広告費に頼らない認知拡大の基盤が少しずつできあがっていきます。

まとめ。広告費の前に問い直すべきこと

Xboxの事例が示しているのは、広告費の多寡が勝負を決めるわけではないという事実です。もちろん広告は重要ですが、広告が機能するためには、その手前に話されるサービスと戻ってくる動線が必要です。

広告費を増やしても成果が伸びない、リターゲティングを回し続けているのに顧客が定着しない。そういった状況に置かれているとき、問い直すべきは予算の配分よりも、サービス設計そのものかもしれません。

よくある質問

広告費をかけずに集客するには何が必要ですか。

話されるサービスと、戻ってくる動線の2つです。広告を積む前に、使った人が誰かに話したくなる体験になっているかを問い直すことが起点になります。

なぜGame Passは広告なしで広まったのですか。

サービス自体が話したくなる体験だったからです。得をした感覚を他者に伝えたくなる設計で、既存ユーザーやストリーマーの発信が認知拡大を牽引しました。

ブランドロイヤリティは設計で作れますか。

作れます。Microsoft Rewardsのように、使い続けるほど好きになる循環を意図的に組むことで、好意度は仕組みとして高められます。

リターゲティング広告を回しているのに定着しないのはなぜですか。

既存ユーザーへのフォロー設計が手薄なケースがほとんどです。追い続けるより、一度接触したユーザーが自然と戻る動線を作る方が費用対効果は高くなります。

小規模ビジネスでもXboxの手法は応用できますか。

応用できます。構造の本質は規模に関係しません。体験を話されるように設計する、戻る動線を作る、ファンの声を資産として扱うの3点に集約されます。

ファンの声はどう活用すればいいですか。

積極的に拾い、発信に活かし、コミュニティを育てる視点を持つことです。それだけで、広告費に頼らない認知拡大の基盤ができあがっていきます。

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