AIに選ばれる時代が来る。トレンドマップ2026を読んだ広告運用者が本気で焦った話。
これからのマーケティングは、人間に選ばれる設計に加えて、AIに選ばれる設計が必要になります。AIエージェントが買い物を代行するエージェンティックコマースの時代には、感情に訴えるコピーではなく、価格・仕様・第三者評価といった構造化データが判断材料になります。今から商品情報をAIが読める形で整理し、比較される前に思い出されるブランドを作ることが対策の起点です。
日経クロストレンドが半期ごとに出しているトレンドマップの2026年上半期版が公開されました。
マーケティング・消費・テクノロジーの3分野で、識者がキーワードの将来性と経済インパクトを評価するあの調査です。毎回ざっと目を通すのですが、今回は正直、少し焦りました。
理由は、私が5年やってきた広告運用という仕事の前提が、根っこから変わりそうだと感じたからです。
AIは「期待」から「当たり前」になった
まず全体像から。今回の調査で最高スコアを叩き出したのは、テクノロジー分野のAIでした。98キーワード中トップです。
ここまでは「まあそうだよね」という話。
私が注目したのは、AIの経済インパクトのスコアが前回から大きく伸びたことです。つまり、「将来が楽しみな技術」から「すでに売上に効いている技術」へと、評価のフェーズが移った。
「面白そう」で語られていたものが、「使って当たり前」になりつつある。この温度差は、現場にいるとリアルに感じます。
私が一番ザワついたのは「エージェンティックコマース」
今回、初登場で高評価だったキーワードにエージェンティックコマースがあります。
ざっくり言うと、AIエージェントが人間の代わりに買い物をする世界のことです。
「消耗品が切れそうなら補充しておいて」とAIに言えば、在庫を確認して、最安のショップを探して、注文まで済ませてくれる。「誕生日プレゼント買っといて」の一言で、好みを汲んで購入まで完結する。
ここで、広告運用者として血の気が引きました。
なぜなら、今の広告は「人間が見て、心を動かされて、クリックする」ことを前提に作られているからです。
キャッチコピーで感情を動かす。バナーで目を引く。LPで不安を取り除く。全部、人間の心理に向けた設計です。
でも、買い物をするのがAIエージェントになったら?
感情に訴えるコピーは効きません。AIは雰囲気では動かない。価格・スペック・レビュー評価・配送速度といった、構造化されたデータで判断します。
つまり、これからのマーケティングには「人間に選ばれる」だけでなく「AIに選ばれる」という、もう一つの戦場が生まれる。
「AIに選ばれる」ために何が要るのか
まだ誰も正解を持っていない領域ですが、今の時点で私が考えていることを書きます。
① 構造化されたデータの整備 商品情報、価格、仕様、レビューが、AIが読み取りやすい形で整理されているか。人間向けの「映えるページ」とは別の論理が必要になります。
② 第三者評価の蓄積 AIは「自社が何を言っているか」より「他者がどう評価しているか」を重視するはず。レビューや実績データの厚みが、そのまま選ばれやすさになる。
③ それでも残る「指名」の力 ただ、全部がAI任せになるわけではないとも思っています。「この会社のこれが欲しい」という指名買いは残る。むしろ、AIに比較される世界だからこそ、比較される前に思い出されるブランドの価値が上がる。
① 構造化データの整備 → AIが読み取れる形で商品情報を整える
② 第三者評価の蓄積 → レビューと実績の厚みが選ばれやすさになる
③ 指名の力 → 比較される前に思い出されるブランドを作る
一方で、人間は「体験」に戻っていく
面白いのは、同じ調査の消費トレンド分野では、まったく逆の動きが出ていることです。
コト(体験)消費が高評価で、コロナ禍で一度盛り上がって落ち着いていたワーケーションや複数拠点生活が、じわっと復調している。
AIが効率化・合理化を進めるほど、人間はリアルな体験や場所とのつながりを求める。振り子のような現象です。
ここに、これからのマーケティングのヒントがある気がしています。
データで処理できる買い物はAIに任せ、人間は体験や意味にお金と時間を使う。
だとしたら、私たちが設計すべきは「効率」と「体験」のどちらに寄せた商品なのかを、はっきりさせること。中途半端な真ん中が、一番選ばれなくなる。
結局、今やるべきこと
正直に言うと、エージェンティックコマースが当たり前になるのは、まだ少し先です。明日から広告が無意味になるわけではない。
でも、地図が書き換わる前に方角を知っておくのと、書き換わってから慌てるのとでは、雲泥の差があります。
私はまず、自分が関わる商品の情報を「AIにも読める形」で整理し始めることにしました。同時に、「人間にしか刺さらない体験的な価値」も言語化していく。
両方の戦場が同時に立ち上がる時代に、片方だけ見ているのは怖い。
トレンドマップは未来の予報です。傘を持つかどうかは、読んだ人次第だと思っています。
よくある質問
エージェンティックコマースとは何ですか。
AIエージェントが人間の代わりに買い物をする仕組みです。在庫確認から最安ショップの選定、注文までをAIが完結させ、人の指示は一言で済みます。
AIに選ばれるために企業は何をすべきですか。
商品情報や価格、仕様、レビューをAIが読み取りやすい構造化データとして整えることです。人間向けの映えるページとは別の論理が必要になります。
AI検索の時代でも感情に訴える広告は効きますか。
買い物の主体がAIになる場面では効きにくくなります。AIは雰囲気では動かず、価格・スペック・評価・配送速度といった構造化データで判断します。
第三者評価はなぜ重要になるのですか。
AIは自社の主張より他者の評価を重視するためです。レビューや実績データの厚みが、そのまま選ばれやすさに直結します。
AIに任せる時代でも指名買いは残りますか。
残ります。むしろAIに比較される世界だからこそ、比較される前に思い出されるブランドの価値が上がります。
エージェンティックコマースはすぐ普及しますか。
当たり前になるのはまだ少し先です。ただ地図が書き換わる前に方角を知っておくことで、慌てずに準備を進められます。
AI時代に選ばれるマーケティング設計、一緒に考えませんか
広告・SEO・SNSの前提が変わり始めた今、何から手をつけるべきか迷っている方へ。
自社の商品情報と導線を、人間にもAIにも伝わる形に整理するお手伝いをします。